雨の日の高井家。
誰も気がつかないうちに山藤が満開になって、緑の苔に散り始めています。
丁子草も、白糸草もひっそり雨に濡れて、
こんな日は、心も薄紫色に染まります。
藤のお茶碗を出して一服。
去年の大雪で全壊した藤棚。
2回の再建工事を経て、生き返りました!
例年になく美しい花の房をつけて蔵の前を彩ります。
きっと、みんなに大丈夫かなと心配されて、植木屋さんにも優しくされて、愛が伝わったのでしょうか。
この藤の花が咲くと、秋に葉が落ちるまで、おかみのたかみはほとんど庭におります。
地面とお話しながらね。
2月25日。
雪は降ってる時より後が怖い。
大量の屋根の上の雪が溶け出し、気温が低いので大きな氷の塊状態。
それが落下するのであります。
高井家の大屋根も、全ての雨樋も、雪の重みで大きな被害が出ました。
特にショックだったのは、一昨年新調し直した藤棚が全壊!
本当にバラバラ。
根元もだいぶやられて、今年の花芽どころか命が…。
もっと困ったことに、この大量の残雪のために屋根やさんも植木屋さんも足場が組めず、すぐには直せないということ。
いつもは上から私たちを見下ろしている藤の枝たちも、雪の地面に着地してびっくりしているだろうなー。
左はボーゼンと佇む九代目。
日光の誰もが初めての大雪でした。
東照宮の春の大祭の日。
今年は、山藤が豊作(?)でしたが、高井家の藤棚も満開。
新芽の弦はのびて、2階の廊下の板の隙間から顔を出したのにはビックリ!
とにかく、藤の花が咲いて、秋に葉が全部落ちるまでが庭仕事のシーズン。
おかみのたかみは、何も考えずにひたすら地球の表面と対話する毎日が続くのです。
実は、3月11日の震災で藤棚も崩壊したのでした。本当に大変な年です。
でも、新しく架け替えた藤棚で、例年より妖艶に咲いてくれました。あ-、これが咲くと秋に葉が落ちるまで、お庭番の忙しい季節の始まりです。
1週間前、やっと藤の花が終わりました。藤の花が咲き出すと、心が千々に乱れるのです。花芽は出たか。弦は伸びたか。花は咲く。上から下へ、たわわに下がる。風が吹く。雨が降る。咲けば散る。そして花が終われば、実にならないうちに切り取って、葉が出れば、葉影の緑に染まりながら、空を見上げる。葉が散れば、毎日続く掃き掃除。
そうです。藤の花と葉の季節は、店の一番忙しいシーズンと重なるからでした。
東照宮さんの春季例大祭も無事終わり、、気がつけば
高井家の庭の花も、毎日つぎつぎと新顔が咲き始めています。藤棚の下では、今年もラッキー君が気持ちよさそうに昼寝をしています。それにしても、寒さのせいか遅れた開花。でも、花芽はいっぱい。きょうはきっとピークかもしれません。
藤棚の下に立って、藤の花の甘い香りのシャワーを浴びていると、時間が止まっているような錯覚と、懐かしい記憶を思い起こさせるような心地よさに、ついふらふらと夢の世界へ誘われてしまいます。子供の頃、東京の大きな藤棚のある料亭の庭で遊んだことを思い出しました。
藤の花の香りを覚えていますか?初夏の午後、山を歩いていて甘いけだるいような妖艶な香りに出会ったら、それは山藤か葛の花です。一房にたくさんの花をつけていますが、根元から順に咲いて咲き揃う間もなくもう散り始めます。そして花の跡につくのはインゲン豆みたいな長い種子です。
山本丘人という画家の作品に、藤棚の木漏れ日の下に佇む大きな犬の絵がありました。美しい絵です。静かな昼下がり、はてあの犬の色は黒だったか、純白だったか…。遠い昔の記憶に誘われるような香り。高井家ではゴールデンのラッキー君が仰向けになって昼寝していました。彼の前世は何だったのかな。