8月31日。日光市総合会館で、輪王寺主催「仏教文化講座」が開かれました。
講師は、作家で比叡山禅光坊住職の瀬戸内寂聴先生と、天台宗米国ハワイ開教総長・大僧正の荒了寛先生。
当日は会館の客席に入りきれない聴衆が国道まで行列するほどの大盛況。なんとか、マイクを通してでもと、ロビーと廊下で聴講できることに。
前半は、寂聴先生。演題は「幸せになるために」。
(すみません。私には「自分が幸せになるために」のように思えました)
お元気でチャーミングな語り口の寂聴さんは91歳。本当に人気があるのだなぁ、と実感。
こんなにも多くの人が、思っていても出来ない生き方に憧れているのか。そしてその言葉に励まされるのか。
しかし、私は寂聴さんのお話を聞くたびに、現在の地位を築かれた才能と行動力に感嘆しつつも、過去を抜きにしては受け止められずに、苦い重い塊を胸に抱いてしまうのでした。
後半、荒了寛先生は「日系人と戦争」というテーマで、ハワイ移民の日系1世・2世たちが、アメリカという国の民として、前線の盾となりながらも、いかに日本人としての誇りを失わずに苦労して今日を築いてきたか、というお話でした。
荒先生ご自身も、まだハワイに天台宗のお寺も檀家もないときに海を渡って40年。宗派を超えて異国での仏教普及に尽力されてきました。
壇上で、「本当はね、今日はどうしたら幸せになれるか、とか、もっとやわらかい話をしようかと思ったんだけどね、ずーっと日系の人達の声を記録してきて、今、私がこれをしなければ日系人と戦争の歴史は埋もれてしまうからね。それに、ほら、今は8月でしょ。」
確かに8月の最後の日。
しかし、その日その会場にいた人達の何人が戦争を思い起こす月と自覚していたでしょうか。
祖国を敵として戦わなければならなかった人々の記録をとり続ける先生の8月。
平和ボケして自分の幸せばかりを追い求める私たちの8月。
胸にズシッときたこちらの重いものには、思わず頭を垂れてしまいました。
講演のあと、昔の著書にサインをしていただいた言葉は、
「其中一人」(ごちゅういちにん)
意味は、観音経の中の言葉で、難や苦痛に遭ったとき、 その中の一人が『南無観世音菩薩』と唱えると観世音菩薩は、直ちに救いの手を 差し伸べてくださった、という逸話から、「其の中に一人しっかりした人がいれば、舟は沈まない」ということだそうです。
そして、先生は「あなたが一人でもしっかりしていれば、この店は大丈夫。一生懸命やりなさい。」と教えて下さいました。
いろいろ悩むことの多いこの頃の私の心をすっかり読まれてしまいました。
多くの人達がそれぞれの想いを抱いて帰路に着いたことでしょう。
ありがとうございます!
本当に感動した仏教文化講座でした。
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